「ドリルの王様 1,2年のたのしいプログラミング」、自然とプログラミング的思考が身につく問題集

「鉛筆で学ぶ小学生用プログラミング教材」という、おもしろい見出しで紹介されているドリルがあります。「ドリルの王様 たのしいプログラミング」シリーズです。プログラミングを学ぶのにパソコンなしで鉛筆とはどういうことなのか、どうやって学習できるのか、本書を読んだ中から良かった点を紹介します。ドリルのターゲットである小学生はもとより、年齢に関係なくプログラミングへ興味ある方は一度手に取ってみるとよいでしょう。

紹介する書籍はこちら、「ドリルの王様 1,2年のたのしいプログラミング」

ドリルの王様 は、新興出版社が出している小学生向けの教材シリーズです。
漢字や計算をはじめ、図形、時計、理科、社会、英語などと幅広く出版されている中、新学習指導要領対応でプログラミングが追加されました。2020年からはプログラミング教育が小学校でも必修化されるため同社ではいち早く対応し出版したとのことです。

こちらのドリルがネット記事で取り上げられはじめたときから気になっていました。思い返せばプログラミング自体ちゃんと習った覚えがなく(そもそもなかったと思いますが)。見よう見まね、いわゆる写経で覚えてきたのでプログラミングを教えるってどういったことなのか、さらにパソコンを使うことなく教えるとは!? 何気なく眺めたらおもしろく、せっかくなのでしっかり読みブログで取り上げることにしました。

主な内容 (目次より抜粋)

  • じゅんじょ
  • くりかえし
  • ぶんき
  • イベントしょり
  • コンピュータの かんがえかた
  • へんすう
  • こたえ と おうちの方へ

コンピューターの動作は決められた手順と繰り返しが基本

まずは基本動作の手順(= じゅんじょ)と、反復(= くりかえし)について、積み木やシールの重ね張りとイメージしやすい問題から入ります。手順通りに作業をするというのを身の回りにあるものや、イメージしやすい形で表現しているのがわかりやすいです。これは本の中でわからなかったら、実際に積み木なりでやってみればよいので入門に良いのではないでしょうか。

また反復では交互の色塗りをしたり、いくつかの絵を1セットとしてセットを繰り返すとどのような順番になるかなど、こちらもイメージしやすくなっています。そのセットも、セットとして理解した後に1つ1つへ分解して繰り返しの一連の処理となるように発展するので、いつの間にかプログラミング的な処理の作り方を勉強していることになります。

繰り返しの概念を分かったうえで、その繰り返される部分へ最初に学んだ「じゅんじょ」を持ってくることで着実な理解が図られるようになっており、勉強の道筋ができていることに感心させられます。

最終的にはロボットを「1マス進む」「向きを変える」という手順と、繰り返しでどのように動いたかという応用問題になります。これまでの単純な手順が繰り返されるではなく「ロボットの向き」が入ってくるので手順がしっかり頭に入っていないとハマるのではないでしょうか。

条件分岐は複雑になりがち、ドリルで頭の整理にも

プログラミングしていると出てくる複雑な条件式。致し方ないケースもありますが、多くの場合は整理ができていないだけです。

簡単な分かれ道の右左分岐でイメージを増幅させてから「〇=〇」「△=△」「◇=◇」の形が同じ条件、またったく異なる形同士での条件マッチと、徐々に複雑化します。さらには算数を混ぜた計算のある条件式と、気づけば実際のプログラミングでも使うような形へ自然とつながっていきます。ここでもプログラミング的な思考力がいつの間にか勉強できています。

なによりも感心したのは状態が組み重なっていく問題。以下、問題文より抜粋 (実際には絵も入っててわかりやすいです)

あおいさんは 上がった はたを 見て、きまった ポーズを とります。

☆ の はたなら、かた手を 上げる。
□ の はたなら、かた足を 上げる。
☆ □ と ちがう はたなら、えがおになる

□、☆、△ の じゅんで はたが 上がりました。
あおいさんが さいごに とった ポーズは どれですか。

[#21 ぶんき ⑦ - P.43 より抜粋]

選択肢としてポーズの絵がありますが本ブログでは省略します。どのようなポーズになったかわかりますでしょうか。この問題は前回の状態を意識して次の条件の結果を加えていく状態変化でもあります。

このように「条件から導き出されること」「状態がどのように変わるのか」、ちょっと考えると簡単な問題ですが、実際のプログラミングとなると、いつの間にか複雑な条件に加えて難しい状態管理となってしまいます。本ドリルで今一度整理するのもよいでしょう。また問題をプログラムで表現するとどうなるのかを思い浮かべてみるのも楽しみ方のひとつと言えるでしょう。

プログラミングやコンピューターに詳しくなくても安心の解説

答えの章には「おうちの方へ」という解説もしっかり入っており、プログラミングやコンピューターに詳しくなくても解説から理解できるように作られています。

たとえば「変数」についての説明なども、下記抜粋のようにシンプルな説明と出題の意図が解説されています。

変数はプログラムで使用する値を一時的に保存することができます。必要な時に値を参照したり、値によって処理を変更したりするときなどに使われます。1つの変数に保存できるのは1つの値だけです。

今回の問題では、ロボットが最後に伝えられた言葉を覚えることを通して、「変数の値を1つしか覚えることができない」ことや、「値は上書きされることがある」などの変数のしくみについて考えることができます。

① ロボットは最初に「キャラメル」を覚え、次に「わたあめ」を、その次に「クレープ」を覚えます。ロボットは1つしか覚えることができないので、「キャラメル」と「わたあめ」は忘れてしまいます。

[こたえ #34 へんすう ① - P.94 より抜粋]

プログラミングに興味ある方にも手に取ってもらいたいと思ったのは、こちらの解説がシンプルで分かりやすいからです。もちろん小学生向けドリルの解説なので、この部分だけでプログラミングできるようになるわけではないですが、上記「変数」のように機能と使われ方がわかりやすく説明されており、ふりかえって問題を見てみるとさらに理解が深まるのではないでしょうか。

紙のドリルであることの良さ

最近では Scratch - Imagine, Program, Share をはじめ、学習用のプログラミング環境やサービスがあります。それらに比べて「紙」であることは、どのようなメリットがあるでしょうか。

1つには、試行錯誤の過程を書き表せることではないでしょうか。
たとえば 商品情報 - ドリルの王様楽しいプログラミング にて、以下の問題が公開されています。

ロボットの動きを考える問題ですが、鉛筆で書いて動きを考えることもできますし、説明する際にも必要な情報を書いてあげることもできます。もちろんパソコンなどを使う場合もディスプレイに加えてノートを使うことで同じようなこともできますが、やはり問題そのものに直接書けるのは紙のドリルならではでしょう。

もう1つには、Try & Error も同様に書いて試せることでしょう。
Scratch などでは実際に動かせるので、手軽に何度も Try & Error できますし実際に動くのでわかりやすいというメリットがありますが、パッと動いておしまいなので過程が飛ばされがちとも言えます。基礎段階としては、過程が残る形で繰り返し試すことは理解の助けになるといえるでしょう。

一方でデジタル・ネイティブ(インターネット・ネイティブ?)としてはどのように感じるのかは聞いてみたいです。生まれた時から YouTube などがあり、あらゆるものがデジタルでネットにつながっている。その様な環境で育ってくると、同じような問題をタブレットなどでやる方が分かりやすいのでしょうか。ぜひ聞いてみたいところです。

まとめ

1~2年生向けとのことでプログラミングの初歩かと思うと、意外と深くしっかりした考え方が身につく本だと思います。

とくに解説である「おうちの方へ」は、シンプルでわかりやすい表現で用語や使い方が解説されており必読です。プログラミングに興味ある方には、ぜひ解説を読んでいただきたいと思いますし、またプログラムを作る方にもこのぐらいシンプルに説明できるかを確認するという観点で見ていただくとよいのではないでしょうか。

今回は1~2年生向けのドリルを紹介しましたが、3~4年生向け、5~6年生向けと3冊でており、アルゴリズムやデータ活用などより発展的内容になっています。すべて解けるか、そして解説まで踏み込んで読み込むとおもしろいでしょう。

参考情報

紹介した書籍「ドリルの王様 1,2年のたのしいプログラミング」


デブサミ 2019 で開催されていた「こどもプログラミング本大賞」に足を運んだことがきっかけで、子供向けのプログラミング本というのに興味を持ちました。子供向けということですが、子供向けであるからこそ説明がシンプルで逆に本質がわかりやすいのだなと感心しながら手に取り、楽しませてもらいました。

今回取り上げたドリルはイベント後の発売なので会場にはありませんでしたが、書店で見かけた際にプログラムを書く身として興味を持ち手に取ったのがきっかけであり、またブログのメンターについていただいている カック@ブロガー / k9u(@kakakakakku)さん が書評を書いていたのが決め手となり本ブログで初書評として取り上げてみました。

本ブログ執筆時点では、またカックさんの書評を読んでおらず同じ本で挑戦してみて、どのような違いがあるかブログの勉強とともに、カックさんの記事を楽しみたいと思います。

カックさんの書評はこちら。

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