「プレゼンドリル 伝えかた・話しかた」、勉強会、LT、イベント登壇のおともにしたいドリル

プレゼンテーション(プレゼン)というと大勢の人前で話をするイメージがありますが、プレゼンの本質は「人にわかりやすく伝えること」。そこには人の多さは関係ありません。人に何かを伝えアクションにつなげてもらう、そんなプレゼンの原点をシンプルに思い起こさせてくれる、そしてプレゼンの機会があるたびに毎回ふりかえりたくなる、そんなドリルを紹介します。

紹介する書籍はこちら、「プレゼンドリル 伝えかた・話しかた」

著者は日本マイクロソフトのエバンジェリスト、西脇 資哲(@waki) さん
マイクロソフトのイベントなどでプレゼン&デモをされているのをはじめ、多数のイベントで登壇されている IT 界のスーパーエバンジェリストのひとりです。

西脇さんは、多くのプレゼンやエバンジェリストに関する書籍を出していますが、今回は小学生向けに出版されました。もともと SSH(スーパーサイエンススクール) という取り組みをされており、筑波大学附属駒場中高や立命館小学校でプレゼンの授業をし、その中から本書ができたとのことです。

今回こちらの書籍を取り上げたのはプレゼン力を高めるためですが「小学生向け」というのが気に入り選びました。プレゼン(に限らないですが)は、話す内容をわかりやすく、極端に言えば小学生に伝わるように話せるとよいとも言われます。そのような中でスーパーエバンジェリストのひとり、西脇さんが本書を出されたということで即買いしました。

IT に携わる方が小学生に向けて作られたプレゼンのドリル。ページ構成こそ確かに小学生向けですが、その内容は大人にも満足できる書籍でした。勉強会での発表や、LT、イベント登壇とプレゼンに向けて、またはプレゼンの機会とまでいかなくとも日々の活動で説明を充実させるために、敢えて小学生向けのドリルでプレゼン力の強化を図るのもいかがでしょうか。

主な内容(目次より抜粋)

  • はじめに―プレゼンテーションとは「伝える」こと!
  • ドリルの使いかた
  • ドリルの注意点
  • 第1章 「伝える」方法を学ぼう
  • 第2章 シナリオを作る
  • 第3章 スライドを説明するトレーニング
  • 第4章 かっこよく話す基本テクニックと裏技
  • 第5章 実践!プレゼンテーションの手引き
  • 模範解答集
  • 保護者のみなさんへ

アイデアを「誰に」「何を」「どうやって」で整理し、自分の意見や考えを加えて広げよう

まずは、泣いている赤ちゃんや、天気予報などの絵をもとに「誰に」「何を」「どうやって」で説明できるように整理するトレーニングから始まります。プレゼンをはじめ、説明をするときに文章だけで考えていると、いつの間にか話が複雑になり最終的にわかりにくい話になってしまうことがあります。このトレーニングは何を話をしたいのか改めて整理するのによいです。

そこから伝えたいことを広げ、事実の説明だけでなく自分の意見や考えを入れるトレーニングに発展します。技術について話をする際に、意外とありがちなのが技術に関する事実や調査の結果にフォーカスしてしまい、最終的な考えや意見が入らなくなってしまうこと。もちろん客観的な事実がないと困りますが、調べればわかることだけで構成されていると少し物足りなくもあります。やはり、その技術に対する主張も聞きたいものです。

たとえば、こちらの写真を見て「お寿司です」以上、はさすがにないと思いますが、どういった説明に意見を加えますか?(実際にドリルにも寿司の問題は入っています)

子供向けとして使うのでしたら説明の仕方の基礎としてしっかりしていますし、プレゼンや登壇の準備として読み直してみるならアイデアの整理と拡大として活用できるのではないでしょうか。とくに2章は1回やったとしても、また新たな考えや意見が浮かぶでしょうし、敢えて違う意見を考えたり、アンチ側としてロールを変えてみるなど色々と使えます。

話のカッコよさ、それは修飾

名詞をただ置くだけではなく修飾をする。ちょっと付けるだけでイメージがだいぶ変わります。しかしながらボキャブラリが必要ですし、イメージを膨らまさないと文章を修飾するのも簡単ではありません。

それをトレーニングする「第4章 かっこよく話す基本テクニックと裏技」は、このドリルの中でとても好きな章です。「ライオン」や「子猫」などの絵から始まり、色のイメージ、比喩、事実に対する意見付け、スライドのつなぎ(ブリッジ)と、話をカッコよくする手法について次々とトレーニングします。ひとりでやるのもいいですが、みんなで意見交換しながらボキャブラリやアイデアを増やすのもよいでしょう。

またスライドのつなぎ(ブリッジ)についても、しっかりと学べる点がよいです。ここはついつい「えっと」や「それで」とかでつないでしまいがちなところを、きちんと考える練習となります。練習なきところに本番の成功はないので、キッチリと練習して身につけたいところです。

模範解答集を見て、思考をもっと柔らかく

「P.69 問題 39 - かっこいいかざりを考えてみよう」では子猫の絵をもとに、かっこいいかざり言葉を考えます。以下は問題をイメージするための写真で問題集の絵とは異なりますが、かっこいいかざり言葉いかがでしょうか?

こちらの模範解答は以下となっています。

ぬいぐるみのような
かわいい
モフモフした
思わず抱きしめたくなる
[問題 39 の解答例 - P.119 より抜粋]

いかがでしょうか。「かわいい」などは浮かびますが、ぬいぐるみや抱きしめたくなるなど、すぐには出てこないかもしれません。「モフモフ」はネットなどで使っているので浮かぶかもしれませんが、プレゼンを作るという思考回路の中で、このような柔軟な発想は出てきますでしょうか。

模範解答集をうまく活用することで、柔軟な思考を広げることにもなるでしょう。大人が読むからこそ、むしろ模範回答集が重要な章ともいえるのではないでしょうか。

まとめ

とても分かりやすく、それでいて実践的な書籍だと思います。

アイデアを広げるための1ページをドーンと使った演習をパラパラっと眺めながら、いろいろな想像の羽を広げることができます。IT 関連のプレゼン作りとなると、どうしても技術やロジックなど論理的になりがちです。そういった中で、ドリルに目を通すことで思考を柔らかくし表現力を高めることができるのではないでしょうか。

プレゼンのテクニックであったり、資料作りのための技術も大事ですが「人にわかりやすく伝えること」にフォーカスを戻すことも重要です。より多くの人に理解してもらう、そしてアクションにつなげてもらう、そんなプレゼンの原点に、いつでも立ち返ることができる素晴らしいドリルです。


前回の「ドリルの王様 1,2年のたのしいプログラミング」、自然とプログラミング的思考が身につく問題集に続き、またも小学生向けのドリルの紹介でした。

子供向けであることから逆にシンプルでわかりやすいというのがあるのではないでしょうか。(とはいえ、ひらがなの多さや文字の大きさには閉口するところもありますが)

このようなプレゼンの授業があるというのは、素晴らしいし、何よりうらやましいですね。プログラミングも見様見真似の写経で覚え、プレゼンはイベント登壇者さんを凝視し技を盗む。ちゃんと教えてもらうことができたら、もっと幅が広がったのかな。それとも逆にやらなくなったのか。いろいろと思うところはありますが、なによりも日々勉強にアウトプット。アウトプットを続け、改良していくことですね。

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